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刑事事件専門 弁護士中澤剛のblog

2014年3月19日

覚せい剤の自己使用罪で心神耗弱が認められました・・・逮捕に強い東京の刑事事件専門弁護士中澤剛

author:弁護士 中澤 剛


覚せい剤の自己使用罪について,心神耗弱が認められるという判決を得ました。覚せい剤を使うことは悪いことだという認識はあったにもかかわらず,心神耗弱でした。

心神耗弱が認められた理由は,覚せい剤の影響によって,行動制御能力が著しく減弱していたことによるというものです。

覚せい剤がからむ事件で責任能力が問題になるときは,覚せい剤の影響下で殺人を犯した等というように,覚せい剤単体だけの事件ではなく覚せい剤以外の犯罪が一緒に問題になることが多いのですが,覚せい剤の影響下で覚せい剤を自己使用したという覚せい剤使用罪単体が問題となったケースで,心神耗弱が認められるケースはレアだと思います(私の調査だと,広島地裁のH9.8.5判決(判タ973-262)くらいです)。

一つ,責任能力に関する事例判断を加えることに貢献できたかな,と思います。

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そもそも,責任能力をなぜ弁護人が争うのか

その話は,刑法の存在理由にまで遡った話になります。

刑法が存在する根拠には争いがあります。
刑法学者の井田良教授によれば,悪いことをしたことに対する報い(応報)という理由もありますが,一番の理由は,一般市民に対して何がいけないか(違法であるか)を明示して,犯罪を予防しようとする点にあります。
例えば,人を殺してはいけないという趣旨のことが刑法199条には書いてある。(正確には,刑法199条には,「人を殺したら,死刑etcに処す」,と書いてあるだけですが,その中には,当然に人を殺してはいけないというルールが含意されています)
そうすると,ふつうの人は,「ああ,人を殺してはいけないのか」とわかる。やってはいけないとわかるのに,殺してしまう,ダメじゃないかそんなことをして,と非難できること,これが責任の本質です。

逆にいうと,非難できないときには,刑罰を課すことはできません。
50%しか非難できないときには,100%の刑罰ではなく,50%の刑罰を課すべきです。
例えば,統合失調症で何が悪いか全く判断できない状況にあるときには,そのような状況下では非難ができません。「やっちゃいけないのにやってダメじゃないか」と非難しても,「やっていけないとわかりませんでした」となり,非難が不可能です。
非難できないことに刑罰を課すことはできないのです。(責任能力のない方で,他者に対して重大な危害を加えた方には,刑罰の代わりに,治療を受けてもらうという制度になっています)。

同じように悪いことでも,1悪いのか100悪いのかで全く異なると弁護士は考えます。
責任非難についても同様です。
やったことが悪くて非難されるべきでも,100非難されるべきなのか,50非難されるべきかは大きな違いです。
50しか非難されるべきでないのに,100非難する内容の判決が出たら,それは,無罪の人が冤罪で有罪になるのと同じくらい,不当であり不正義であると考えます。
そのような理由で,今回,無事に心神耗弱が認められたことは,弁護人としては妥当であったと考えており,ホっとしているところです。

3 ところで,覚せい剤をやれば心神耗弱になるのか?といえば,そんなことはありません。

典型が,「原因において自由な行為」と呼ばれるものです。

例えば,自分が正常な判断能力がなくなることが分かっていて,「覚せい剤を使ってラリった状態になって人を殺せば,責任能力がなくて,無罪になるのか。これはいいことを聞いた。Aを殺したいと思っていたが,無罪となるために,さっそく覚せい剤を使って判断能力をなくしてからAを殺してしまおう。」とXさんが考えて,実際にこれを実行に移して,心神喪失状態でAを殺した場合,責任能力が否定されることはありません。

これは,原因において自由な行為と呼ばれるもので,その根拠には難しい論争がありますが,要するに上のXさんのように悪いことを考えて処罰を免れるようなことはさせないぞ,という理論です。したがって,覚せい剤をやって責任能力を無くしていれば悪いことをしても平気だ,という考えは誤りです。

4 もう1点
 そもそも,以前に覚せい剤をやっていたのが悪いのだ,という考えもありますが,以前覚せい剤をした行為については以前覚せい剤をしたという「その行為」自体を犯罪として処罰するべきであり,「今回の行為」については今回の行為について犯罪の成否,重さを検討するべきです。
 それは,例えば甲さんが100円の万引きをして,その3年後に銀行強盗をしたとして,銀行強盗で起訴された時に,前の100円の万引き事件が全く別の事件であることと同様です。
 「今回の行為」の時点で責任能力が無い,あるいは著しく減退していたのであれば,「今回の行為」については,あまり(あるいはまったく)非難ができないのです。そのことは,以前の行為について,無罪放免にするものではありません。以前は以前で,別個罪に問われることは当然のことです。しかし,だからと言って,今回の行為についても重い責任があるかというと,それはまた別問題なのです。

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カテゴリー:刑事事件 comments(0) 6:08 PM 

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